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サッチャーさんの訃報に接して

リーダーシップ

 マーガレット・サッチャー英元首相が亡くなった。ご高齢だったので、いつかはこの日がくるだろうと思っていたけれど、訃報に接して、何とも言葉にできない思いを抱いている。サッチャーさんは、その強烈な手腕に毀誉褒貶ある人だったが、間違いなく20世紀を代表するリーダーだと思う。70年代末のイギリスは、清掃公務員のストライキによって町にゴミがあふれ、失業率は高止まりし、企業は停滞を続けていた。そんな「イギリス病」の英国を、自由主義に対する強い信念のもと、復活へと導いたのだ。
 サッチャーさんは、階級社会のイギリスにあって、食料品店の娘という、当時の保守党の本流からもっともはずれたところから出発しながら、人一倍の努力で、ひとつひとつ選挙を勝ち上がって党首となった。79年に保守党が労働党から政権を奪って首相となったときには、政権をとったあとの改革の青写真はすべてできていて、数々の抵抗勢力と戦いながら、実行に移していった。テロリズムには常に断固たる態度で臨み、ソ連の指導者としてゴルバチョフが登場したとき、「彼とは仕事ができる」と、いち早くその資質を見抜いた。EU(当時はEC=ヨーロッパ共同体)に政策をゆだねることには常に懐疑的で、一定の距離をおいた。
 そばに仕えた人は皆、その強烈な個性にたじたじとなったようだが、彼女のリーダーシップは、おそらく歴史によって評価されるのだろう。もしサッチャーさんがいなければ、イギリスの歴史も、20世紀後半の世界史も、まったく違ったものになったことは間違いない。

サッチャー回顧録―ダウニング街の日々〈上〉

サッチャー回顧録―ダウニング街の日々〈上〉

サッチャー回顧録―ダウニング街の日々〈下〉

サッチャー回顧録―ダウニング街の日々〈下〉


(追記)翌日(4月9日)のBBC Global Newsのポッドキャストから、サッチャーさんが1990年11月28日に、ダウニングストリート10番地(首相官邸)を後にするときのスピーチが聞こえて来た。

We 're leaving Downing Street for the last time after eleven and a half wonderful years and we're very happy that we leave the United Kingdom in a very, very much better state than when we came here 11 and a half years ago.

(私たちが11年半の素晴らしい年月をすごしたダウニングストリートを去る時が、とうとうやってきました。11年半前に私たちがここに来た時よりも、英国をずっとずっと良い状態にして去ることができることをとても幸せに思います。)