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経営者が「言葉力」を語ることの重み

言葉 リーダーシップ

 こういう本を待っていた気がする。コマツ会長・坂根正弘氏の新刊『言葉力が人を動かす』である。
 私の仕事のコアの部分に、経営者のメッセージ発信の支援がある。私の会社アテナ・ブレインズは、「企業の成長を言葉の面から支援する」ことをミッションとしているのだ。
 ただ、「言葉と企業の成長がどう結びついているの?」と聞かれると、日産・ゴーンCEOの事例とか、ハウステンボスの再生をなしとげたHIS・澤田会長の事例とか、アップルのスティーブ・ジョブズの事例など、「言葉の力」に優れたリーダーの事例を挙げるのが、私にできる精一杯のことだった。でも、この本では、経営者が自ら、こう言っているのだ。

……「なぜその改革を実現できたのか?」ということを考えると、それは社員や取引先などコマツグループの人たちが、私というリーダーについてきてくれたからである。そしてさらに、「なぜついてきてくれたのか」と考えると、私の発する言葉に彼らが耳を傾け、理解・納得し、協力してくれたからにほかならない。つまりコマツが成し遂げたV字回復は、「言葉の力」を抜きにして語ることはできないのだ。……人を動かすのは、つまるところ言葉である。リーダーの資質は言葉の力にあると言っても過言ではない。(同書、P.2〜3)

 そのV字回復がどれほど特質すべきものだったかは、坂根会長がハーバード・ビジネス・レビューの特集“The 100 Best-Performing CEOs in the World”で、17位に選ばれていることからも明らかである。
 そして、本書でなるほど、と思わされたのは、以下の部分だ。

私の思う「言葉力」とは、言葉を発する前の段階と、あとの段階の行動も含まれる。つまりある人間の言葉が人を動かすだけの力を持つには、話す前に現実をよく「見る」ことが必要だ。……そして語ったあとには、その自分の言葉を自分自身で「実行する」ことが求められる。いくら「語る」だけが巧妙でも、人を動かすことができないのだ。(同書、P.8)

 言葉に実行が伴っていること。これが、リーダーにとっては不可欠である。そしてもう一つの真実は、「不言実行」でなく「有言実行」こそが大事だということ。
 日本において私たちは、「不言実行」、「巧言令色少なし仁」とか、「言わなくてもわかる」といった文化の中で育ってきているので、ついつい言葉(口に出して言うこと)を軽視してしまいがちだ。けれども、以前に書いたように、今の時代は、日本においても「有言実行」型のリーダーが求められていると私は思う。このことは、皆、表向きは理解してくれるのだが、実際は「不言実行」派や「言わなくてもわかる」派がとても多いと感じる。今度そういう人に出会ったら、本書を手渡すことにしたい。「有言実行」がなぜ大事で、いかなる成果を生むのかが、事例とともにきわめて明晰に本書に書かれているからである。