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オープンエデュケーションの現在

 昨日(3月9日)、アカデミーヒルズ(六本木)で開催された、「オープンエデュケーションがもたらす人材革命」と題されたセミナーに参加してきました。講師は、飯吉透さん(京都大学高等教育研究開発センター教授、オープンエデュケーションの第一人者)で、モデレーターは石倉洋子さん。
 「オープンエデュケーション」とは何か。飯吉さんによれば、「オープンエデュケーションとは、インターネットが普及しつつある世界で現在進行中の、『学びと教え』を巡る素晴らしいムーブメントです。(中略)。『インターネットにアクセスできる人であれば、誰もがウェブによってもたらされた新たな学びや教えの可能性を恩恵を得られ、さらに互助的に貢献することもできる』という点が何よりも希望に満ちています」(梅田望夫さんとの共著『ウェブで学ぶ』p.11〜12)。
 今回のセミナーでは、最初の1時間20分ほど、飯吉さんが、アメリカや各国の高等教育の事例をもとに、オープンエデュケーションの現状について説明されました。そのときに、キーワードとなっていたのが、「情熱増幅装置としてのオープンエデュケーション」と「格差超越装置としてのオープンエデュケーション」です。「情熱増幅装置」というのは、日本でも有名になった、マイケル・サンデル教授や、カーン・アカデミー(Khan Academy)のサルマン・カーン氏、MITの物理学教授のウォルター・ルーウィン(Walter Lewin)教授などの、個人の情熱が、いかにウェブによって増幅されていくか、という側面です。たとえば、「図書館」なども、古くからあるオープンエデュケーションの手段ですが、「増幅」が可能になったのは、ウェブならでは。「格差解消装置」というのは、箱モノの大学をつくって教師を確保することが難しい途上国で、ウェブ上の教育コンテンツやコミュニケーションツールを最大限に利用したウェブ上の大学ができるなど、途上国ほど、オープンエデュケーションへの欲求が強いといった側面です。
 オープンエデュケーションには、飯吉さんの定義によれば、「オープン・コンテンツ」「オープン・テクノロジー」「オープン・ナレッジ」があるのですが、興味深かったのは、初期の頃は「コンテンツ」「テクノロジー」が中心だったのが、最近は「ナレッジ」共有のための試行錯誤が行われているという点です。
 その他、オープンエデュケーションを含めたインターネット上の動き(主にアメリカ)についての、次のような時代区分も、「なるほど」と思いました。1990年代はEの時代(eラーニング、eコマースなど)。「電子化」の時代。2000年代はOの時代(オープンソースオープンコースウェアなど)。「オープン化」の時代。2010年代はCの時代(community,commons,cloudなど)。
 この3つの時代区分に対しては、後半の石倉洋子さんとの対談のときに、飯吉さんから、「日本では、Eのあと、Oを経ないでCに行ってしまったのではないか。本当は、Oを経ないとわからない部分がある」という問題提起をされていたのが印象的でした。
 以下に、セミナー後半の飯吉さん・石倉さんの対談や会場との質疑で印象的だった議論をいくつかご紹介します。

  • ダボス会議の「人材」委員会で、「21世紀に必要なスキルは何か」ということを侃侃諤々議論して、結論は、「学び続ける力」だった。オープンエデュケーションは、「学び続ける」際にもっとも重要なインフラ。(石倉さん)
  • かつては、「学んで」「働いて」「引退する」というコースだったけれど、現在は、学んで、働いて、学んで、働いて、リタイヤして、働いて、というふうに繰り返す時代。そのときに、オープンエデュケーションを利用すれば、その都度仕事を辞めて学校に行く、ということを繰り返さなくても、並行することができる。(石倉さん、飯吉さん)
  • 「オープンエデュケーションのコンテンツは英語がほとんどなので、日本人には英語がネックでは?」という質問に対して、「まず、自分が何をしたいか、何を学びたいかが先。そういう先に立つ情熱があれば、英語はついてこざるを得ない」。(飯吉さん)
  • TEDの15分くらいのプレゼンテーションビデオを見たり、最近では、「ドットインストール」(http://dotinstall.com/)の3分間のプログラミング学習ソフトを利用したりしているというご自身の体験を紹介しながら、「こういうことをやりたい、と思ったら、必ずウェブ中に何かしらあるので、ちょっとやってみる、という精神が大事」。(石倉さん)
  • グローバル人材とコミュニケーション力に関連した質問に対して、「単にコミュニケーション力だけあってもダメ。伝えたいものがないと。どういうことに対しても、自分が意見を持っていて、それを人と共有して、より良いものにしていきたいというマインドが大事」。(石倉さん)

 会場からの質問は尽きず、時間が全然足りないと感じるような盛り上がり具合でした。私自身は2時間あまりのセッションのあとに、個人にとってオープンエデュケーションというのは、結局、オープンであったり、学びたいと思ったらすぐにその日から学び始めるといった『マインド』、『心のありよう』のことなのだ、と感じ、諸々腑に落ちました。あとは、実践あるのみ!

ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命 (ちくま新書)

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グローバルキャリア ―ユニークな自分のみつけ方

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