言い続けること、最大公約数と最小公倍数

 今日おじゃました先で、「言葉」「コミュニケーション」をめぐって、最近考えていることについてお話をさせていただいた。質問をいただいて、その場では漠とした答え方しかできなかったことなどもあり、このテーマについて考えを巡らせながら帰ってきた。その一部を、忘れないうちにメモしておきたい。

  • 言い続けることの大切さ

企業の中において、また企業から外に向けてメッセージを伝えるときなどには、言いあきるくらい、同じメッセージを繰り返し伝えることが大事。大統領候補だったときのオバマが、「Change」「Change」と言い続けたように。そのくらい言い続けて初めて、多くの人に浸透する。

  • 短いキャッチフレーズにすることと、言葉を尽くして伝えること

短いキャッチフレーズにすると、覚えやすいけれども、そこには細かいニュアンスはこめられない。だから、時には、あらん限りの言葉を尽くして語ることも大事。短いキャッチフレーズは、伝えようとするメッセージの核の部分であり、いわば覚えておくためのアイコン。

  • 「言わなくてもわかるだろう」という前提を排する

日本人は、同じ会社のメンバー同士や親しい仲間内ではとくに、「言わなくてもわかるだろう」と、文脈の共有を前提としているところがあるが、その前提を排する必要があるのではないか。(私は、「空気読め!」という言葉が嫌いで、「空気読めファシズム」と密かに呼んでいる。)100%話したつもりでも、50%しか伝わっていないということはよくある。

  • 最大公約数と最小公倍数

たとえば、あるテーマについてよく知っている人と、あまり知らない人が同じ場にいるとする。そうした場合に、往々にして話が最大公約数的になってしまう。ごくわずかの言葉で「わかったつもり」になり、実はみんな本当のところはわかっていなかった、個々人の理解は全然ちがっていた、ということが後から判明したりする。こういう場合に、「言わなくてもわかるだろう」という前提を排して、最小公倍数を心がけてはどうか。つまり、3知っている人と2知っている人がいると想像される場合に、6は話すようにする。どんな場合でも、そのテーマを一番知らない人が理解できるように伝えれば、最小公倍数的な話ができる。


最大公約数と最小公倍数は、先の「短いキャッチフレーズにすることと、言葉を尽くして伝えること」とにもあてはめることができる。アイコンとして、覚えておくための記号として、最大公約数の部分を短い言葉にすることは大事だけれど、それだけで伝わっていると思うと、落とし穴がある。機会があるごとに言葉を尽くして、いちばんそのテーマをわかっていない人が理解できるように伝えること、最小公倍数の語り方を心がけること。
少なくとも、最大公約数と最小公倍数の両方に意識的であること。「自分が言っていることは50%も伝わっていないのでは」「わかっているだろうと思って言葉にしていないことが、実は全然伝わっていないのでは」という懐疑の念を持つこと。必要なのは、空気を読むことでなく、他者への想像力なのである。