読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

オープンとクローズの組み合わせ

 石倉洋子先生の新著、『戦略シフト』の刊行を記念した講演会(丸善丸の内店)に行ってきた。
こんなにパワフルで、高揚感あふれるメッセージを聞いたのは、いつ以来のことだろう。
 以下、特に印象に残った部分をメモしておきたい。

  • 21世紀は、「変化が当たり前」の全く新しい時代。二度ともとには戻らないので、覚悟を決める必要。
  • その特徴は、(1)オープン化。国境、業界、企業、組織などの「ボーダー」がなくなりつつある。
  • (2)力のシフト。G8からG20へ、企業から消費者へ、といったパワー・シフト。
  • (3)トレード・オフ(二律背反)がなくなりつつある。両極端の共存。ICTにより、世界が同質化するのではといわれたが、実際には、世界が多様であることもICTによって明らかになりつつある。メガヒットとロングテールの共存。OR(二律背反)からANDへ。
  • こういう時代には、唯一正しい戦略があるわけではない。AND戦略の例としては、グローバル・ニッチ。分野の融合(ナノテクとライフサイエンスの融合など)。
  • 「OR→AND」の戦略シフトで大事なこと。自分たちのユニークな強みをどう生かしていくか。より広い視点から見て、それを生かせる競争の場を探す。
  • この戦略シフトにおいては、試行錯誤と、ダイナミックさと、スピード感が大事。とくに、時間への感度が重要。完璧なものを出そう、全部自分たちでやろうと思わずに、出してから常にバージョンアップする。
  • 世界のスピード感が、今の日本できちんと体感されているか疑問。ヨーロッパや最近のアジアの高速道路を走るのと、首都高を走るのとが、スピード感が全然違うように、日本と世界のスピード感は全然違う。自分で走ってみないとわからない。
  • 企業にとっては、時間への感度とともに、「新しい組み合わせ」がポイント。オープン・イノベーション。
  • 日本企業は、完璧主義、自前主義で、あまりオープン化していない。しかし、世界中からのいろいろなアイデアを活用しない手はないし、自社内に死蔵しているアイデアを外に出すことにより活用できる。
  • 「何をオープン化するか」のときに重要なのが、「ロジック」(参考:G・サローナー他著、石倉洋子訳『戦略経営論』東洋経済新報社)。ロジックは、「何がなかったら、この戦略は崩壊するのか」という、戦略のカギ。その部分はぜったいに出さない(クローズにする)。それ以外は、オープンにしてよい。オープン(出すところ)とクローズ(守るところ)の組み合わせが大事。
  • 戦略シフトを誰が主導するか。世界と日本がつながっているという意識を体感として持っている、若い人。試行錯誤してみようという気概のある人。
  • 「最近の若い人は内向き」といわれるが、二極化していて、世界に出て行こうという人もいる。そういう人を応援したい。日本が変わるのは時間がかかるから、若い人は、日本が変わるのを待つより、世界に出て行って、世界を体感したほうがいい。

・・・

 最後に石倉先生が強調していたのは、次のようなこと。
「この本で、一番伝えたかったのが、『企業が主役です』ということ。世界経済危機以来の論調(=政府の役割が重要)と異なるので、執筆しながら迷ったが、政府の介入は一時的なもの。新しい付加価値を作り出すのはやはり企業しかない。事業環境は「与件」と言っていてよいのか。企業は、これからの時代にもっとモノを言わないと」。
 会場の聴衆は、企業の方が多かったので(最初に「企業の方はどのくらいいますか?」と言われて挙手した人がほとんど)、このメッセージは多くの聴衆に響いたことと思う。私自身も、こうした石倉先生の日本企業向けのメッセージに大いに納得しつつ、さらに、「個人の戦略」ということにも、思いをはせた。
「オープン(出すところ)とクローズ(守るところ)の組み合わせが大事」ということは、プロフェッショナルとして生きる個人にとっても同じなのではないか。スピード感、ダイナミックさ、試行錯誤。不思議と、それらの困難さよりも、ワクワク感を強く感じた。
嵐の夜の出版記念会。本にサインもしていただいて、行った甲斐が大いにありました。

戦略シフト

戦略シフト

(追記)石倉洋子先生ご自身のブログはこちら。セミナーのレジュメもあります。