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不在であることの存在感

言葉 備忘録

「conspicuous by its absence」という言葉は、id:simpleAさんに教わった(このエントリ)。
この言葉を思い出したのは、2ヶ月半前に亡くなった知人の家を、昨日お訪ねしたからである。お線香をあげて故人のご冥福をお祈りする、ということとともに、私がお預かりしていた「未完の作品」(草稿の一部分)をお返しする、というのが大きな目的だった。
半月ほど前に、訃報に接した直後は、「完成に導くことができなかった」という後悔の念にさいなまれた。しかしご遺族とお話ししているうちに、未完の作品があるからこそ、いつまでも記憶にとどまり続ける、という思いが強くなった。三日月を見て満月を思うように、きっとこれから、故人を何度も思い出すことになるのだろう。
外房の海にほど近い緑の豊かな故人のお宅には、ウグイスのさえずりが聞こえ、駅までの道には、暑さでぐったりなった紫陽花と、久々の陽光を楽しんでいるかのような向日葵が並んで咲いていた。千葉から横浜までの3時間あまりの汽車の旅は、故人のことを独りでゆっくりと思うに必要な時間だった。