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Don't compromise your integrity

言葉

岩瀬大輔さんの『ハーバードMBA留学記』(日経BP社)を初めて読んだのは、2年と少し前。少年が大人へと成長していく教養小説ビルドゥングスロマン)のように読んだと同時に、優れたアメリカ論であるとの読後感をもった。アメリカ体験記の名著としては、『若き数学者のアメリカ』(藤原正彦著)、『アメリカが嫌いですか』(阿川尚之著)『アメリカン・ロイヤーの誕生――ジョージタウン・ロー・スクール留学記』(同)などがあるが、これらに匹敵する名著であると思う。
最近、その『ハーバードMBA留学記』が文庫になったので、改めて手に取ってみた(文庫のタイトルは『金融資本主義を超えて』文春文庫)。今回もまた、みずみずしい教養小説のように読んだが、2年前には軽く読み流してしまった、社会起業家への言及部分や、ファンド資本主義への洞察部分など、まさにいまホットなテーマが満載の本であることに気がついた。
日本に居ながらにして、この書を読むことによって、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)への疑似留学体験ができるということも、考えてみればとてもありがたい(しかも、所要時間3時間、税込み660円で!)。著者自身の言葉はもちろん、同級生の言葉など、引用したい部分が多々あるが、一カ所だけ、メグ・ウィットマン(イーベイCEO、当時)の、HBSの学生に向けてのキャリアアドバイス部分を引用しておきたい。あらゆる職業人に有効な、普遍性のあるアドバイスであると思う。

一、Do something you enjoy 職場は朝から晩までいるところなのだから、本当に楽しいと思える仕事を選びなさい。
二、Deliver results 仕事が与えられたら、その大小や自分の役割にかかわらず、とにかく必死に行なって結果を出しなさい。そこからチャンスが次々と広がっていくはず。
三、Note down your learnings 私は七社を渡り歩いたけれど、月に一回は自分の仕事を振り返り、学んだことをノートに書き留めることにした。皆さんもそうされたし。
四、Be patient--career is a marathon, not a sprint 昇進などを焦らないこと。(・・・)キャリアは短距離走ではない。マラソンなのだからじっくり駆け抜けて。
五、Build a great team, and share credit with them 自分一人でできることはたかがしれている。周りを優秀な人たちで固めて、成功を彼らと分かち合うようにすることが大切。
六、Be fun to work with 一緒に仕事をしていて、楽しい人であることを心がけよう。
七、Don't be afraid to ask questions 分からないことは、ためらわずに質問すること。
八、Don't take yourself too seriously うまくいっていないときは、あまり悩まずに軽く流すようにする。
九、Don't compromise your integrity 自分の価値観、倫理観に反するような行動を要求されたときは、その職場は辞めどきと考えるべし。
十、Don't drink your own bath water 自分の成功に浸りすぎない。過信せずに、成功できたのは環境のおかげ、周りの人たちのおかげ、運のおかげと考え、絶えず自分に何が足りないのかを振り返ること。
(同書、p.310-311)

金融資本主義を超えて―僕のハーバードMBA留学記 (文春文庫)

金融資本主義を超えて―僕のハーバードMBA留学記 (文春文庫)