答えはいつも、相手のなかにある

僕の考えるアートディレクションは、自己表現が原動力ではありません。「いろいろなジャンルのプロジェクトを数多く手がけていて、アイデアが尽きることはないのですか?」。こう聞かれることも多いのですが、その心配は全くありません。なぜなら、答えはいつも、自分ではなく相手のなかにあるからです。それを引き出すために、相手の思いを整理するということが、すごく重要になってくるのです。
――佐藤可士和佐藤可士和の超整理術』(日本経済新聞出版社、2007年、p.29)

今をときめくアートディレクターである佐藤氏は、「僕がドクターでクライアントが患者」という巧みな比喩をつかいながら、上記のように述べている。アートディレクター=表現者、という思い込みがあったが、氏の言葉に、まさに目から鱗が落ちる思いがした。
考えてみれば、クライアントからの依頼により始まる仕事は、アウトプットが問題解決や提案(コンサルタントの場合)でも、建築物の設計図(建築家の場合)でも、アートディレクション(デザイナーの場合)でも、文章や資料(私の仕事の場合)でも、まず「聴く」ことが起点になる。クライアントの言葉に耳を傾けることから始まるというのは同じで、アウトプットの形が違うだけなのである。
ちなみに、同書が出たばかりの頃には、狭い意味の「整理法」の本と思い込んでいて、長らく読まずにきたが、「もっと早く読めばよかった」と非常に後悔した。やはり一流の人には、創造のための、磨き抜かれた方法論があるのだ。

佐藤可士和の超整理術

佐藤可士和の超整理術