「中原中也の思い出」

世間を渡るとは、一種の自己隠蔽術に他ならないのだが、彼には自分の一番秘密なものを人々に分ちたい欲求だけが強かった。その不可能と愚かさを聡明な彼はよく知っていたが、どうにもならぬ力が彼を押していたのだと思う。
――小林秀雄中原中也の思い出」

この一年ほど、自分の仕事人生の転機に直面し、読書を楽しむことができなかった。読んだ本は、「会社のつくりかた」といった実務的な本や、直近の仕事で必要な本ばかり。まだ、長編小説を楽しむほどのリハビリは出来ていないが、短いものなら大丈夫だろうと思って、2年くらい「積ん読」状態だった、齋藤孝さんの『人間劇場』(新潮社)を手に取った。ニーチェ小林秀雄からイチローまで収めた、巧みなアンソロジーである。そのなかで不意打ちを食らったように心に突き刺さったのが、上記の文章だった。
書物や様々なメディア、あるいは、いろいろな方との出会いのなかで心に刺さった言葉、忘れがたい言葉を、これから、ときどきこのダイアリにメモしていこうと思う。